野生のおこじょ(オコジョ)に会いに行く前に知っておきたいのは、会える場所ははっきり決まっていない、ということです。具体的な場所は公表されていません。会えたらうれしい、くらいの気持ちで、安全第一に出かけましょう。
すむ場所の全般や、動物園、巣、縄張りについては、おこじょはどこにいる? 会える場所と動物園、巣と縄張りで紹介しています。この記事では、会いに行く前の準備に絞ってお話しします。
北海道の山とエゾオコジョ
エゾオコジョの確かな観察地点は公開されていません。環境省の案内に生息が記されている山として、大雪山国立公園があります。
環境省の大雪山国立公園の紹介ページには、広い森林にすむ哺乳類として、ヒグマ、エゾシカ、エゾリスなどとともに、エゾオコジョの名前が挙げられています。公園計画の資料でも、エゾクロテン、エゾシマリス、エゾモモンガ、エゾナキウサギなどと並んで、中小型の哺乳類のひとつとして記されています。
大雪山は標高2,000m前後の山々が連なり、緯度が高いため、本州の3,000m級の山に匹敵する厳しい高山の環境になっています。真夏でも大きな雪渓や雪田が残る場所があり、氷河期の生き残りといわれるエゾナキウサギも、高山帯の岩場にすんでいます。
エゾオコジョは、おもに山地やその周辺にすんでいます。里のそばで気軽に見られる動物ではない、ということは知っておきたいですね。
本州の高山帯とホンドオコジョ
ホンドオコジョに会える山も、はっきり決まっていません。環境省の案内に生息が記されている例として、北アルプスなどの中部山岳国立公園と、南アルプス国立公園があります。
中部山岳国立公園の紹介には、哺乳類として、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ニホンザルとともにオコジョが挙げられています。新潟、富山、長野、岐阜にまたがる北アルプス一帯の公園で、槍・穂高連峰などの3,000m級の山が連なっています。
南アルプス国立公園の紹介ページには、ホンドオコジョの解説があります。鳥やネズミ、昆虫を食べ、樹の洞や岩のすきまに巣をつくる動物です。
中部山岳国立公園の紹介では、植生の区分として、標高おおむね2,500m以上を高山帯、1,500〜2,500mを亜高山帯としています。高山帯にはハイマツやお花畑が広がり、ライチョウなど高山の生きものがすんでいます。おこじょがこの帯のどこで見られるのかは、公表された情報ではっきりしません。見られるかどうかは時期や天候にも左右されます。
登山で気をつけること
おこじょを探しに行くなら、それは本格的な山歩きでもあります。まず優先したいのは、動物よりも自分と同行者の安全です。
- 最新の情報は、国立公園のビジターセンターなどの案内で確認する
- ヒグマの出没情報や天候を事前に調べ、無理のない計画を立てる
- 長野県の指定登山道では、登山計画書の届出が必要です。県の登山安全条例にもとづくもので、届出は2016年7月から始まっています。対象の登山道は変わることがあるので、出発前に長野県の登山安全条例のページで確認してください
- 天気や登山道の状況は変わるものとして、状況に応じた服装と装備を持つ
- 単独より、できるだけ複数で歩く
- 少しでも不安があるときは、引き返す勇気を持つ
- 雨具と防寒具は、夏でも持つ
- 地図やライト、水や食べ物は、余裕をもって
ツキノワグマの出没情報と、午後の雷や急な天気の変化にも気をつけ、早めに行動を終えましょう。行程には余裕を持たせて、日が暮れる前に山小屋や下山口に着く計画が安心です。
大雪山の森林には、ヒグマもすんでいます。おこじょのような小さな動物を探すあまり、道を外れたり、周囲への注意がおろそかになったりしないよう、気をつけて歩きましょう。出かける前に、環境省や自治体のクマ出没情報と、ビジターセンターの案内を確認しましょう。
夏毛と冬毛、季節で変わる姿
おこじょの毛は、季節で生え替わります。時期は年や場所で変わります。夏毛は背中が褐色でお腹が白く、冬毛は全身が白くなって、しっぽの先だけが黒く残ります。
- 夏の山で出会ったら、茶色の背中に白いお腹の姿
- 秋から春の山では、白い冬毛やその途中の姿
雪のある時期の山は、夏とはまったく別の装備と経験が必要です。冬から春の大雪山は雪山の世界で、雪の多い時期の高山は冬山登山になります。おこじょの白い姿を見たいからといって、無理をして入る場所ではありません。
見かけたときのマナー
おこじょを山で見かけたら、近づかず、餌をあげず、少し離れたところからそっと見守るのが基本です。ホンドオコジョもエゾオコジョも、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧に掲載されています。数が多くない動物だからこそ、出会えたときの静かな時間を大切にしたいですね。
近づかない、追いかけない
おこじょは体が小さく、すばやく動く野生動物です。ふいに目の前に現れると、もっと近くで見たい、写真に収めたいという気持ちになりますが、人が距離を詰めるほど、おこじょにとっては大きな負担になります。
国立公園や国定公園の一部の区域では、2022年4月から、野生動物にみだりに餌を与えたり、著しく近づいたりすることが規制されました。職員の中止の指示に従わずに続けると、罰金が科されることがあります。くわしくは国の案内をご確認ください。
どのくらいの距離が「著しく」にあたるかは、動物や場所によって異なります。おこじょの場合は決まった数字を挙げにくいため、次のような心がけが目安になります。
- 動物の動きが止まったり、物陰に隠れたり、こちらをじっと見続けたりしたら、そっと下がる
- 追いかけない、行く手をふさがない、囲まない
- 見つけた場所が巣穴のそばらしいときは、近寄らず静かに離れる
餌をあげない、食べ物を残さない
国の案内でも、餌付けによって動物が人への警戒心を失い、人が利用する場所に出てきやすくなることが問題とされています。かわいいからといって食べ物を分けるのは、おこじょのためにもなりません。
ライチョウのキャンペーンでは、見かけても捕まえずに見守ること、キツネなどを引き寄せないよう山では食べ物を捨てないことが呼びかけられています。食べ残しやごみは、必ず持ち帰りましょう。
撮影のときの心がけ
環境省がシマフクロウ向けに出している案内ですが、おこじょにも当てはまる心がけです。フラッシュを使わないこと、巣を探したり巣の周りに近づいたりしないことが挙げられています。
- 望遠やズームを使い、足を動かして距離を縮めない
- フラッシュや強い光を当てない
- 決められた道から外れない
- 大きな声や物音を立てない
- 数人で一か所に集まりすぎない
SNSに載せるときは、巣や詳しい場所が分かる情報を控える、という配慮もあります。
ご家族やお友だちと出かけるとき
おこじょを見つけると、思わず声が出てしまうものです。けれど、大きな声や急な動きは、動物を驚かせてしまいます。見つけたら、小声で知らせ合って、静かに足を止めましょう。
- お子さんには、出かける前に「見るだけ」「さわらない」「追いかけない」を約束しておく
- 近づこうとする人がいたら、やさしく声をかけて止める
- 犬を連れて歩くときは、野生動物に近づかないよう、リードを短く持つ
こうした心がけは、おこじょだけでなく、山で出会うすべての生きものに通じます。人が静かにしていれば、動物も本来の暮らしを続けやすくなります。おこじょを見かけたあとは、静かにその場を離れましょう。
会えなかったときも
おこじょは警戒心が強く、すばやく動くので、山を歩いてもなかなか出会えない動物です。エゾオコジョも、くわしい暮らしぶりは分かっていないことが多い動物です。だからこそ「山の妖精」と呼ばれ、出会えたときの喜びが大きいのでしょう。
会えなかったからといって、山に何もなかったわけではありません。ライチョウやホシガラスなど、ほかの高山の生きものに出会えるかもしれませんし、高山植物や遠くの稜線など、その山ならではの景色も待っています。大雪山には、多彩な高山植物が咲くお花畑や、夏まで残る雪渓など、見どころがたくさんあります。
会えなくても、山の景色だけで十分すてきな時間になります。会えたら幸運、くらいの気持ちで歩くのが、おこじょにも自分にもやさしい山歩きです。
出会えた思い出は、心の中だけに。okojoya(おこじょ屋)では、おこじょのグッズで、その気持ちを持ち歩けます。ステッカーやポストカードなら、気軽に楽しめます。
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